東京MOOCer

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オンライン学習サイトで独学する人のブログ

オンライン学習教材MOOCsのご紹介

生涯学習の強い味方、大規模公開オンライン講座、通称MOOC(ムーク)をご紹介する記事です。既にネット上にもあるのですが、私の記事を見て下さった方に対して私自身の観点からご紹介するのが目的です。私はソフトウェア・エンジニアなのでそちら寄りの情報が多くなります。

目次

 

1.MOOC概要

世界中の大学や企業が様々な講義を開講する場です。学習機会を広く提供するという趣旨でアメリカの大学が先導し開設されました。2つが特に有名です。
スタンフォード大学発のCoursera(コーセラ)
・バーバード大学とマサチューセッツ工科大学発のedX(エデックス)

コンテンツは多岐にわたり、ソフトウェア・エンジニアリングや語学のように実践的なものから、音楽・美術鑑賞の講座、タイムリーなものではCOVID19に関する公衆衛生学の講座まであります。

上記で触れたいわゆるMOOCとは毛色の異なる教材にUdacity(ユダシティ)というものもあります。企業で働く社会人を主なターゲットにIT技術の学習するサイトで、実践に重きが置かれています。同じく学習機会を提供する場という意味で広くMOOCとして紹介したいと思います。

他にもいくつかありますので、気になる方は調べてみてください。

誰もが学べる場

MOOCの趣旨がどのようなものか雰囲気を掴んで頂こうと、Courseraのビジョンを意訳したのでご紹介します。

【Courseraのビジョン(意訳)】*1

私たちは学びこそ進歩の源だと信じます。

学びには世界を変える力があります。
病気を健康に、
貧困を繁栄に、
争いを平和に。

学びには生活を変える力があります。
私たち自身のために、
家族のために、
社会のために。

私たちが誰であろうと、どこに居ようと、
学びは我々を変え、我々を伸ばし、新たな可能性を示してくれます。
良質の学習機会を得ることは権利です。特権ではありません。

だからCourseraがあるのです。
素晴らしいパートナーとともに、
最良の学びを、
世界の隅々へ。

学びによって運命を変える力が、今やその手の中にあります。
誰であろうと、どこにいようと。

私はCourseraとUdacityでの学びによって新しい可能性を手にしたうちの一人だと思っているので、非常に共感します。誰もが学べる場がMOOCなのです。

 

2.CourseraとUdacityに共通する価値

優れた講師陣

世界トップクラスの人に直に教わると勉強が面白くなります。何事も先生は一流の人であればあるほど良いです。「自分はまだ始めたばかりだから初級クラスの先生に教わろう」と考えがちですが、そうではなく「一流の先生に初級レベルの教えから乞う」のが理想です。

大学が開講すると聞いて難しそうに思えるかも知れませんが、一流ほど難しいことを簡単にしてみせてくれます。

講義にもよりますが、世界的な第一人者(レジェンドクラス)が登場することがあります。学習者として非常に喜ばしいことです。そうでなくとも世界トップクラスの教授たちに学べることに変わりはありません。

優れたコース設計

【体系立てられた構成】

初学者は体系を持たないので何をどの順で学んでいけば良いのか判断が難しい場面があります。これに対してMOOCは、一連の講座を終えるとその分野に関して体系的な知識が得られる構成になっているので、未知の分野の学習をする場合でもこういった問題にぶつかりにくいです。ひとつひとつブロックを積み上げていくと、修了時には家が出来上がっているようなイメージで、独学者の負担軽減になります。

【理論と実践のパッケージ】
理論と実践がセットになっているのは非常に重要なポイントです。何事も実践なしに理論を深めることはできません。ソフトウェア開発系の講座ではプログラミング課題がセットで提供されていますし*2、それ以外の場合は簡単な理解度チェックのテストがあります。

 

3.Coursera

大学による講座が大半を占め、教育機関の色が濃いです。ソフトウェア系だとGoogle, IBMなどが講座を展開しています。

講座の種類

一番小さな学習単位が「コース」で、次の単位として複数コースを束ねた「専門講座」があります*3

はじめから専門講座にエントリーして、各コースにアクセスするのも良いですし、コースを一つずつ受けて結果として専門講座を修了することも可能です*4。もちろん気になるコースだけ受けることもできます。

上記2つに加えて、「修士課程の学位」が発行される過程もありますが、こちらについては受講していないので詳細な実態は存じ上げませんが、正真正銘の学位として扱われるようです。

費用

冒頭で紹介したように、いかなる人にも学習機会を提供するという目的で運営されているためか、価格は抑えめです*5

講座はサブスクリプション型で5600円/月程度です。この期間内に終わるかサブスクリプションを停止すればひと月で支払いが止まり、そうでなければひと月単位で延長という仕組みです。最近は年間コースも登場し、こちらは1年間どの講座も受け放題のプランです。

実は無料視聴することもでき、「聴講コース」を選択すると動画にはアクセスできます。ただし、課題(と修了証)は有償版のみです。聴講コースで様子を見て良さそうであれば有償に切り替えることが可能です。

聞いただけでは身になりづらいと思いますので、しっかり学びたいものはお金を払ってテストを受けたりソースコードを書くのがオススメです。あとは、持続的な運営のため、余裕のある場合はお金を払って頂けると良いと思います。

 

4.Udacity

Udacityは自動運転、データサイエンス、Web開発…と主にソフトウェア開発者向けのサイトで、企業が必要とする人材の育成に重点を置いている点が特徴です。

彼らのミッションは、ざっくり「未来のキャリアを作る」ことに主眼が置かれており、忙しい社会人でも学び続けられるような場を提供しています。なのでCourseraよりも実践の比重が大きいですし、キャリアサポートや修了者の人材紹介のサービスもあります。

Udacityはプロジェクトベースで進みます。理論を学んだら、プロジェクトが用意されています。Courseraも理論→プロジェクトの流れは同様ですが、課題はUdacityの方が重たい印象です。

個人の意見ですが、Udacityの応用レベルの講座におけるプログラミング課題は企業で直面する課題と非常に近く設計されていると感じます。学んだ内容をそのまま適用するとベースラインができるイメージです。ここから先は論文などを参考に積み上げる力が求められますが、講座で学んだことが経験値として役に立ったという感覚があります。非常に価値あることだと思います。

講座の種類(と費用)

有償の講座と無償の講座があり、有償の講座を終えるとNano Degree(ナノ・ディグリー)と名付けられたUdacity独自規格の修了証・学位が付与されます。無償講座は古くなった有償講座が降りてくるという仕組みになっていると思われます。アルゴリズム寄りの講座は内容が古くならないので、無償講座でも十分楽しめるものがあります。

Nano Degreeはプログラミング課題があり、キャリアサポートの特典がセットでついてきます。一方無償講座は基本的に動画視聴のみです。時々スカラシップと題して、有償講座もどきを無償で受ける機会があります(有償講座の一部を受けるイメージ)。応募して当選した場合に参加できるのですが、当選者は何段階かに分けてふるいにかけられます。通過すると有償講座をフルで受けられるという仕組みです*6

Nano DegreeはCourseraと比べて高額です*7。時々半額セールや30%OFFセールをしているので受講を急がない方はタイミングを合わせるとオトクです。

講師

大学教授、Udacityお抱えの講師、提携企業の方々が講師を務めます。大学教授だと自動運転の父セバスチャン・スランさんやAI系で有名なピーター・ノーヴィグさんなどのレジェンドが、その他、C++の開発者であるビヤーネさん、機械学習界隈だとGoodfellow本で有名なグッドフェローさんなども登場します。提携企業ではGoogleメルセデスベンツなど様々です。どの講師も明るくポジティブな雰囲気を心掛けて説明してくれるので、動機づけが高まり元気に勉強できる印象です。

キャリアサポート

最近始まったサービスです。Nano Degreeを購入すると、キャリアサポートが付帯します。

【キャリアコーチ】
いわゆる相談をしてアドバイスをしてくれるサービスで、どういうキャリアを目指しているか、現状とのギャップは何か、などを明らかにして、やるべきことをアドバイスしてくれます。

【添削サポート】
GitHubやLinkedInでの自己紹介の書き方などの添削が受けられます。確かレジュメの添削もあったように思いますが、それはキャリアコーチのサービスかも知れません。

日本の転職活動では英文レジュメを求める会社がないこともあり、アメリカ仕様の準備という感じもなくなないです。しかし、やっていることは非常に合理的で勉強になると思います。

 

おわりに

少し前にはアクセスできなかったであろう情報が手に入る時代に生まれて幸運だったと思わずにはいられません。Courseraのビジョンで謳われていることが全てで、学びは生活・世界を変える大きな力を持っていると私も思います。

私のオススメ講座をまとめたページがありますので、良かったらご覧ください(機械学習人工知能分野がメインです)。

 

*1:Courseraのビジョン

*2:Google ChromeFireFoxなどのWebブラウザで完結するため、環境構築の必要はありません。PCかスマートフォンでインターネットに接続できさえすれば良く、他に購入するものはありません。プログラミング課題をする場合は、スマートフォンだとキーボードで殆ど隠れてしまって非効率ですから、PCが良いでしょう。

*3:例えば「りんごコース」「みかんコース」「ももコース」「米コース」「お肉コース」という5つのコースと、「フルーツ専門講座」という1つの専門講座があるとします。「フルーツ専門講座」はりんご・みかん・ももの3コースがセットになっているというイメージです。

*4: ※2の例を引き継ぐと、①はじめから「フルーツ専門講座」でエントリーして、りんご・みかん・ももの3コースを順に終えて専門講座修了証の発行を受けてもいいし、②とりあえず「りんごコース」にエントリーして修了し、次に「みかんコース」、そして結局「ももコース」も修了したとしても専門講座修了証は発行されます。①・②で学ぶ内容に差異はありません。現在はサブスクリプション型になっているので、専門講座としてやる予定の人は①のパターンでやった方が余分な支払いが無くて良いのではと思います。

*5:今でも安価に学ぶことができますが、以前はもっと無償提供感がありました。持続的に運営していくために最近は有償の範囲が明確になってきましたが、それでも手の届きやすい価格で高品質な講座を提供してくれています。

*6:完全に余談です。私も1度スカラシップを受けたのですが、学習以外の活動に時間を取られて本末転倒に思えました。Slackでの発信を推奨されており、その参加具合も段階をパスできるかの審査に入ります。チームミーティングをしなさいという活動もあり、上野のハードロックカフェで集合することになっていました。その日参加する予定だったのは全て海外勢です。当時神奈川方面に住んでいたのではるばる電車で行ったものの、オフラインになった瞬間に誰一人来なかったのは驚きました。ひとりは昨日ハングオーバーしたので来れず、また別な人はやっと連絡がついたと思ったら今足を怪我してしまったとの弁解を受け、責めるわけにもいかず、ここは動物園だなと思って帰ったことがありました。Slackでは相変わらずガンガン活躍されていて、海外勢の貪欲さは笑うしかなかったです。

*7:ある時ぐんぐん値上がりし、少し下がって今に落ち着いた印象です。私の見立てでは、ここから大きく上振れることはないのではと思っていますが、Udacityは私企業なので変動する可能性が十分あります。責任は負いませんので悪しからず。